まず何をしてきたのか?
日本皮革産業連合会(=JLIA)から事前に客寄せパンダをしてくれ、と言われたときに提示したのは以下の3つでした。
1 30分〜1時間で終わるワークショップ(=ws)
2 職人の実演
3 革の説明
結局この3つ全てやってくれ、という事になり行いました。言いだしっぺの私(=ムラキ)が段取りや、WSや革の説明を延々と、、、、orz 百貨店で一日立ち仕事する人ってすごいと実感させられましたわ

WSは何やったん?
ワークショップは30分で終わるストラップ、1時間で終わるミニバッグ、1時間で終わるミニポーチ、さらに1日だけ靴職人さんに1時間で終わる靴キーホルダーをやってもらいました。
これら4種類、全てが内容が異なります。
1 30分で終わるストラップ…
・第3者の手伝いがあるなら3歳児から可能
・ポンチを使い革に穴をあける・カシメでパーツを留める
・知ってもらいたいこと…革に自分で穴を開けることを知ってもらう。カシメを使えば簡単に革と革をつなげることができる。
2 1時間で終わるミニバッグ…
・第3者の手伝いがあるなら3歳児から可能
・当店のナチュラルタンニンのSVハードを使っています。刻印を使うことで自分自身のデザインで革の上に模様を表現できる。
・知ってもらいたいこと…ナチュラルタンニン革を使ったらこのように自分の好きなように模様を打てる&タンニン革は使っていたら徐々に風合いが変わる、ということを知る
3 1時間で終わるミニポーチ…
・小学生以上
・菱目で穴をあけ、自分で縫っていく
・知ってもらいたいこと…革を縫う、というのはミシンじゃなくて手で縫えるということを知る。
4 1時間で終わるミニ靴
・小学生以上
・裁断済みの靴パーツを針と糸で縫っていく
・知ってもらいたいこと…ネイティブアメリカン(インディアン)のモカシンと同じ作り方をしているので、靴の作り方を知ってもらう。

WSは作り手がお金を稼ぐ、ということももちろん重要です。
でも今回のケースでは「革というものを消費者に使ってもらい、知ってもらい、将来革を使ってもらう、作ってもらう」という流れを作るのが重要です。
JLIAが進めている革育の一環ですね。
で、実際効果あったの?
さて、どうでしょうかねぇ
西宮阪急、という場所は聞いてみるととても特殊な場所だそうです。
従来の百貨店の考え方は「ものを集めれば人がきて、売上があがる」というものです。
それに対して西宮阪急は「体験を提供すれば人がきて、売上があがる」というものです。
あにょ?それって小売店の考え方じゃなくてイベント屋さんの考え方じゃないですか。
今回のプロデューサーさん「そうなんですよ。阪急の中でもこの店は特殊です」
それで1階の食べ物売りゾーンを歩いていても「カクテルの作り方講習」とか、「似顔絵書きます」などがあるんですか
「そうです。西宮阪急はコトコトステージという体験ブースを数多く持っています。その数は1階から3階まであわせて30を越えます」
30!?異様に多いな。
「ですからこの阪急の周りの住人の方々がチラシを見て『あぁ、トコトコステージで色々体験してみよう』と、よく訪れます」
なるほどなぁ。
西宮阪急が来たお陰でこの地域が寂しくなったわ!来るお客が遠方の人ばかりで地元は無視かよ!ではなくて、地元のお客さんを大切にしよう、という意味合いがあるんでしょうなぁ。
さて。
この話を踏まえた上で最初の質問「で、実際効果あったの?」を考えるとWSに来てもらったお客様は地域の方が多いように思いました。その方々には効果はありました。
「面白いわ〜、この近辺でこういうのできないの?」とよく聞かれました。
近辺に教室があれば私たちは喜んで紹介するのですが、西宮〜神戸間には革の教室が非常に少ない。
(というか、最近1軒知ったくらいです。もし教室業をやりたい、という方がいるなら三宮近辺はお勧めです。他方大阪市内は絶対やめときなはれ)
地域の方々に喜んでもらえたのは西宮阪急の今までの信頼に基づくものだと思います。
それはこの地に開業して数年、コトコトステージという体験ゾーンを続け、地域の方々に知ってもらっている実績だと思います。
JLA的には「JLAというイベントを目当てに多数の人が来てもらい、そこで革を見た人にWSをしてもらい、革に興味をもってもらいたい」というのが本旨だと思います。そこを踏まえて「ワークショップは効果あったの?」と言われたら微妙かな、と思います。
西宮阪急でWSやるよりも子供や親子連れが多いイベントに出展したほうがより多くの人数に革のワークショップを経験してもらえたと思います。
多分このblog自体をJLA関係の方々も読むだろうから言葉を気を付けなければいけないのですが、決して「意味が無い」と言っているわけじゃないです。
「WSはもっと効果を発揮できる。そのためにはより多くの人に見てもらう場でやるほうが効果的」だと思うわけです。
今回のフェニックスのJLA会場でのWSは地域住民の方々には喜んでもらえた、とは思いますが、人の目に触れる場所に置いてくれればもっともっと多数の方に喜んでもらえる、と主張するわけです。
「じゃぁ、ワークショップをJLAの会場でやるのは意味が無い、という意味か?」
いえいえ、そうじゃないです。むしろ逆です。
JLAはこれからもっと大きくなるからもっと集客に力を入れなければいけない、と思っています。
その一環としてWSを行い、翌年、翌々年にさらに人に来てもらえるのは重要だと思います。
じゃぁJLAというイベントはどう思うねん?先はないのか?集客少ないのか?
今回のJLAの西宮阪急イベントでは受賞作品の展示販売、並びにバザールというプロ部門出展者の品を販売しました。
それらを脇で眺めつつ思ったのはJLAというイベントの将来でした。
それは決して暗いものではなく、明るいものです。来年は応募者はもっと増えるだろうな、と思いました。
JLA、というイベントはもっと多くの人を呼べるイベントであり、もっと出展者がお金を儲けられるようになるイベントに成長できる、と思うわけです。
コンクール、展示会的なモノは以前も書きましたが、出場して受賞した人がその後にお金を儲けられないと意味が無いと思っています。
「あのイベントで受賞したの!?じゃぁ是非うちの店で置いてよ」
「あのイベントで受賞したAさん、是非うちで販売したい」
こういう流れを作らなければ意味がないわけで。
工賃を安くするから仕事をもらう、ではなく、自分自身の価値(=ブランド、信頼)を高めてそれに応じたお金をもらうようになる。その価値を高める一手段がこのJLAだと思うわけです。
この長々としたblogを端的にまとめるなら
このイベントは金の匂いがするから作り手やメーカーさんは今後出展して受賞しておいて損はないぞ。
そしてJLA主催者はそれに応じて集客してJLAの名を高める努力をしないと作り手からそっぽを向かれるぞ
というものです。
フェニックスとしてはJLAの集客の一環=客寄せパンダとしてどうぞ自由にうちを使ってもらいたいと思います。
材料屋は弱い存在です。
作り手の方から見たら材料屋ってぇのは安定しているように見えるでしょうが実際は逆です。
作り手がモノを作るために材料を買ってもらわないと生きていけない、それが材料屋です。
だからこそ、フェニックスは作り手さんが生きていく手助け(=材料提供、情報提供、機会提供の手伝い)を行なわなければ死んでしまうなぁ、というのが今回JLAを見ていて思った感想ですね。
それはその通りですが、
「作り手がモノを作るために材料を(タンナー等から)売ってもらわないと生きていけない」
事もお忘れなく。
間も無く、日本中のタンナーが死に絶えるか、特定の常連のお客様に売るための革しか作らなくなりますから。
>「作り手がモノを作るために材料を(タンナー等から)売ってもらわないと生きていけない」
作り手、材料屋、どちらが上というつもりはないです。どちらが上ではなく、どっちも同じ立場だと私は考えています。
革業界はおっしゃるように将来が明るい業界ではないと思います。だからこそ「売ってやる」「買ってやる」ではなく、お互いを尊重しあえる市場を作らないことにはお先はさらにまっくらだと思います。
前向いて方向性を定めて歩かないことには暗闇から抜け出せない、ですわ ( ´∀`)