「おや、ムラキさん。また漉きをお願いしたいんですが」
製本用の漉き、ですな?
製本用の端漉きはものすごく神経を使います(~_~;)
EIKOさんは本のアトリエEIKOというお店・教室をなさっています。

製本なども行なっており、時たま漉きの依頼を受けます。
本のアトリエEIKO〜カルトナージュ素材・製本材料店: 関西材料店マップ
製本の漉きはちょいと独特なので普段革をやっている人でも知らないであろう世界を
紹介してみましょう。

製本に革を使う技術はルリユールと呼ばれフランスで発展しました。
先日のblogでちょいと書いたモロッコ革などもフランス植民地であったモロッコで作られ
フランスに送られ、そこで製本に使われていたわけですな。
民族学博物館で革の勉強をしてみようpart1 動画資料で皮なめしやらを見る: レザークラフト・フェニックス
このモロッコ革、シボありの山羊のタンニン鞣しですが、とても高額な革です。
更に言うなら国内の革屋さんでは厳密な意味での「モロッコで作られたモロッコ革」は
手に入らないと思います。
製本材料を売っているお店で扱っていたりします。そういうお店もフランスの製本材料店舗から
仕入れているケースが多いと思います。
このモロッコ革は漉きをする際はとても厄介な革です。
・製本する際には水張りしますのでタンニンのように水を吸う革じゃないといけません。
・さらに製本の際は厚みを0.6mm〜0.4mmに漉いたりします。
・で、この革の端っこ折り曲げる部分を0.2〜0.3mmに漉きます。

「シボありのタンニン革」「全体の厚み0.5mm前後」「その端っこを0.3mmに漉く」
この悪条件3点セットが整うと漉きはとてもむずかしくなります。(~_~;)
「でもね、ムラキさん、いつもは東京の製本関係のお店に漉きを出しているけど、
不満点があるんですよ」
ほい?
「端っこ15mmの所を0.3mmに漉いてもらっているんですけど、
漉きが終わった部分の段差が気になるんです」
あぁ、俗にいう肉が残る、というやつですな。。
本や紙に貼り付けて折り曲げてみるともっこりと段差ができるんでしょ?
「!!そう!そうなんですよ。これを改善した漉きをしてもらいたいんです」
これは財布などの小物のヘリ返しに使われる「ヘリ漉き」という技術の発展系技術で
『肉をとった上での「ヘリ漉き」』になります。
本来これをやる場合は専用の押さえをこしらえてやらなければきれいに出来ないのですが、
押さえなど作っていられないので下記の工程で代用します。
元厚0.5mmの革の端っこ20mm部分を斜め漉き>その後に端っこ15mm部分を0.2〜0.3mm漉き
文章に書くと簡単そうですな!(~_~;)
一度斜め漉きを行なっているので砥石の刃がなかなか引っかかりません。
さらに薄く漉く&シボありなので簡単に穴が空いてしまいます。
このようにものすごく繊細な漉きをする場合はご覧のように右手でちょっとずつ刃を回していきます。

最終的に下記のように出来上がります。

わかりにくいですが端っこ15mmをへり漉き0.2mm、そこから5mm幅を斜め漉きされています。
この漉きは作業が終わるとドロリと嫌な汗が出るほど緊張します。
製本の漉きはほんとに緊張しますわ
漉きの依頼も預りになりますがまたご相談に応じます。
ただ製本の漉きはちょっと高めに頂戴させてもらいます。
シボのきつい革、柔らかすぎる革の場合は失敗する率が高くなりますのでご了承ください。
初心者中級者向けの漉き技術を聞きたい場合はまた下記の講座にご相談ください。
漉き機・ミシンを購入する前にちょっと聞いておいたほうがいい講座を開催しました: レザークラフト・フェニックス
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