財布などの裏革に羊の革を貼るのが好きなのですが、物によっては柔らかすぎてコバ周辺で浮いたり、表面が剥がれそうになる場合があります。(本体の革との接着自体は問題ありません)
そこでおすすめの硬化剤やコバ処理剤って何かありますでしょうか。」
柔らかい革か〜、、
柔らかい革ってのは縫うにしてもコバ処理にしてもちょいとめんどうです。

コバをきれいに仕上げたいならば「接着3割、裁断3割、コバ塗りテクニック4割」だと思っています。
(もしかしたら4,3,3,かもなぁ)
ここらも話すとず〜〜〜〜っと長いのでまたセミナーでも開いた際に延々と語ってみます。
09年にも一度カスタムによるコバ処理の記事を書いていますのでその片鱗をちょっと見てみてください。
コバ処理どうやるの?カスタム編: レザークラフト・フェニックス
さて。
今回の柔らかい革、という場合はちとめんどうです。
ちょうど依頼受けていた数物仕事が折よくコバ塗り仕上げだったのでその作業をしながら説明してみましょう。
今回の革は合成タンニン厚み2,5mm程度です。
クローム・合成タンニンの場合はコバ仕上げはカスタムやサーマルコート、イリスなどのコバ処理剤を使わなければできません。
合成タンニンで合計厚みが2,5mmならば質問者さんの「柔らかい革」とは合致しませんが手順は同じです。
硬い革なので処理は楽なのですが、いかんせん今回の仕事の流れは
サンプル>刃型作成>裁断後に「コバ処理やって」と言われた
後半になって工程変更が出たため段取りに狂いが生じています。(-_-;)
前述している「接着3割、裁断3割、コバ処理テクニック4割」の原則の「裁断3割」がまるまる抜けてしまいました。。
これはコバ処理テクニック4割でリカバー出来る問題でもないのですが、出来る範囲でやってみましょう。
下記写真を見るとわかりますように張り合わせたコバにずれが生じています。
人間の手で接着を行う以上必ずずれは生じます。
ですので本来は「欲しい寸法より一回り大きく裁断して全部貼りあわせてから切り落とす!」というテクニックでコバ面をすっぱりと平面にします。これが「裁断3割」という意味ですね。

今回は裁断してしまっているのでズレを手で裁断して補正していきます。
まぁ、手で切っても多少段差は残ります。
この段差が後々の仕上がりに悪影響を与えてくれます。

で。
ここで登場するのが「目止め液」という下地剤です。

まずこれを塗っていきます。
厳密に言うと塗る、というよりは載せる、ですね。

多分この写真見てもわからないと思いますが、目止め液を塗ることで革のコバが多少しっかりと固められます。

要は
「柔らかい革ならばカスタムなどの処理剤を載せるところだけしっかりと固めてあげればいいじゃん!」とうい考え方ですね。
エルメスのふんわり柔らかいカバンなどで切り目(コバ)仕上げのカバンを見たらコバ部分を触ってみてください。
多少しっかりとしているのがわかると思います。
目止め液には「固める」以外にも「上にのるコバ処理剤の食いつきを良くする」=色落ちがしづらくなる、「革の毛羽立ちを抑える」などの目的もあります。
塗り塗り塗り塗り

お次は研磨です。
研磨のコツは
「横着せず番手の荒いものから細かいものへと磨いていく」>今回は180>240>400だったかな
これに尽きます。
写真にちょっと写っているのはプラモデルの方々が使う研磨具です。
写真には撮っていませんが彼らが使うスピンやすり、という道具もたまに使います。
今回は数が多いので自作の専用磨き工具で一気に研磨しています。


目止め液>研磨を行なってようやくカスタムのコバ塗りです。

さて、ここでひとまず完成ですが、乾くのに時間がかかるのでしばらく放置(20分〜30分)してください。
その合間に先ほど書いていた伏線
この段差が後々の仕上がりに悪影響を与えてくれます。
を回収しておきます。
下記写真を見るとわかる(かなぁ、、)ように段差があります。
これは研磨するにしても限度があります。
研磨に1時間かけるよりも裁断を5分きっちり行うほうが効果が高いです。

まぁ、ぐちってもしょうがないのでこの場合は塗った部分を「潰して」いきます。
カスタムなどのコバ処理剤を塗ることでコバ表面に皮膜が形成されています。
この部分の厚みはせいぜい0.1〜0.2程度。分厚く何度も塗れば皮膜はより厚くなります。
これをウッドスリッカーで磨くことで皮膜を潰し、細かい段差を埋めてしまう、という考えです。

ウッドスリッカーは高い道具ですがこういう作業の時に威力を発揮します。
平たくて硬い木材工具、というのはそれだけで意味がありますねぇ。
ウッドスリッカー - レザークラフトフェニックス
桜丸(ウッドスリッカー) - レザークラフトフェニックス
平たい面でつぶし、その後丸い溝部分で磨きます。
これによりコバの直角部分が多少潰れて丸みが出ます。
このほうが高級感が出ますね。
作業前がこれ

作業後がこれ

写真下部に生じていたカスタムのコブが多少潰されています。
カドもちょっぴり丸くなっていますね。
「なんだ思ったほどきれいにできていないじゃん」
えぇ、そうですよ(´・ω・`)
基本は裁断でどれだけ平滑にしておくか、です。
だからきれいにコバを仕上げたいならば型紙は一回り大きく作って、接着後に切り落とすのが一番です。
写真や動画で書いてもここらはちょいと伝えきれいない部分が多いのでまたセミナーなりやります。
その際は「靴の人のコバ仕上げ」「熱ゴテ仕様のコバ仕上げ」「ワックス仕上げ」など盛り込んでいこうと思います。
※目止め液がまだネットショップに載っていないのでまた木曜日あたりに掲載しておきます
・コバ処理剤 - レザークラフトフェニックス
目止め液 100cc - レザークラフトフェニックス
文責:ムラキ
動画で紹介!新しいコバ処理道具「コバフェルト」: レザークラフト・フェニックス
本日は革日和♪イベントWS「コバ処理」はどうだったか: レザークラフト・フェニックス
これは、レザークラフトやってる人間ならみんな興味があると思います。