こんにちは、吉川です。
革の値上げラッシュに続き、
厳しい情勢のお話です。
フェニックスでは、
昭南皮革工業所さんの多脂ベンズ、グレージングベンズ、本底用ベンズ、中底用Wショルダーなど、
他所さんではなかなかお目にかかれない厚みと品質の革を扱っていますが、
いよいよ厚みのある原皮が取れなくなって来てるとの情報が現実味を帯びてきました。
北米で飼育される食用の牛は…
ブロイラー方式の下、生産効率とリスク回避が優先され、
出来るだけ年数をかけずに牛を肥大させることが主流となっています。
長生きさせるだけ病気などのリスクが出てくるという考え方です。
そのため、皮膚組織が成熟しないうちに原皮として発生するので、
厚い原皮が取れなくなってきているようです。
これを解消する技術的な方法があると聞いています。
薬品で繊維を膨らませて厚みを出すというものらしいのですが、
繊維を膨らませることで、厚物革の強靭なコシが損なわれ、
繊維の詰まり具合に悪影響が出ているように思われます。
個人的には邪な技術に思えて仕方ありませんが、
タンナーさんは責められるべきではありません。
日本国内の消費傾向と革に対する理解度の問題だと思います。
タンナーさんは、需要があるから作るのですから。
昭南皮革工業所さんはそういう邪な技術に頼らず、
いい原皮を仕入れ、厚物を仕立てるのに最高の機械設備を備え、
日本の皮革産業隆盛期を支えた技師(鞣しの技術者)の鞣しをそのまま踏襲し、
強いこだわりを持って上質な革を供給し続けています。
ですが、昭南皮革工業所さんでも、
原皮事情ばかりはどうすることもできません。
多脂ベンズやグレージングベンズ、中底用Wショルダーの厚みが、
下ちることは必至ですし、
本底用ベンズもいつまで続けられるか定かではありません。
今後この流れは革が副産物である以上、
どうすることもできません。
作り手の皆さんにおかれましては、
革材料の調達や、定番革の選定の際に、
一情報としてお役立て頂ければと思います。
フェニックスでも引き続き
“いい革”を作り手さんに提供して行く所存ですが、
天然物&副産物故の事情をご理解頂き、
お付き合い頂ければと思います。